【事例レポート】古いDVD-RAMバックアップからのデータ復旧—現場で起きたトラブルと実務的な対策

ちょっとしたトラブルから始まった復旧作業の報告です。結論を先に言うと、形式が特殊なバックアップメディア(DVD-RAM)と現行環境の非互換性が原因で手間が増えました。以下、経緯・技術メモ・実際にやったこと、そして今後の現実的な対策案を、検証した事実に基づいて整理しています。
発端と経緯(要点)
- 製版用RIPソフト(XMF)の更新に伴い、再版用に登録していたデータが消失しました。
- 該当バックアップはDVD-RAMで保管されており、現在のmacOS/ドライブ環境では読み取りに問題がありました。DVD-RAMはドライブ対応やファイルシステムにより読み書き挙動が異なるため、最新のMacで安定して読めるとは限りません。
実際にやったこと(手順と結果)
復旧にあたって実行した主な手順と結果は次の通りです。
- 倉庫に保管していた古いMacを通電・起動して読み取りを試行。古い機種では読み取れたり読み取れなかったりと不安定でした。
- 一部メディアはカートリッジや物理的劣化のためそのままでは読めなかったため、メディアを分解してディスク単体としてドライブに入れ、読み出し→ISO化(ディスクイメージ作成)を行いました。macOSのDisk Utilityやコマンドライン(
hdiutil
/dd
)でイメージ化しています。 - 旧OSの環境では外付けのRAIDコントローラやRAIDケースを認識せず、直接マウントできないケースがありました。今回の復旧では、RAIDを認識する別のMacにRAIDドライブを接続し、該当の古いMacとネットワーク経由でファイル共有(SMB/AFP)を設定してデータを転送することで対処しました。この方法は物理的に読み出せないボリュームに対する現実的なワークアラウンドです。
- 1枚あたりの作業に数時間かかることがあり、対象は約400枚。総復旧期間は1〜4年規模の見込みです。
技術メモ(検証済みポイント)
DVD-RAMの互換性
DVD-RAMは特殊仕様として採用例があり、ドライブ側の対応状況やOSのファイルシステム(UDF/HFS+ 等)によって読み書き挙動が変わります。最新のmacOSに標準で安定対応するとは限りません。
ディスクイメージ作成
読み取れたメディアはDisk Utilityでのイメージ化や、コマンドラインのhdiutil
/dd
でISO/DMGを作成して保管するのが現実的です。マウントできない場合の対処方法も含め、イメージ化しておくことが重要です。
旧macOSのRAIDとファイル共有
一部の古いmacOS環境や古い外付けRAIDケース/コントローラは、最新のドライバやファイルシステムを必要とし、ローカルでボリュームをマウントできない場合があります。今回のケースでは、旧MacがRAIDを正しく認識できなかったため、RAIDを認識できる別の(比較的新しい)Macに接続してボリュームをマウントし、古いMacとファイル共有(SMBまたはAFP)を設定してデータを転送しました。実務上はネットワーク速度やパーミッション、ファイル属性の引き継ぎに注意し、必要に応じてターゲットディスクモードや外部ドライブ経由での直接コピーを検討すると良いでしょう。
光学メディアの寿命
光学記録メディアは種類や保存状態で寿命が大きく変わります。DVD-RAM/RW系は可逆メディアのため経年劣化で読み取り信頼度が下がる可能性があります。長期保存を目的にするなら媒体の選定や定期検証が必要です。
学び(運用面での要点)
- 「読み出せてからが勝負」:古いメディアはいつでも読めるとは限りません。物理的破損やドライブ非対応、ファイルシステムの互換性などで想定外の工数が発生します。
- コストと堅牢性のトレードオフ:倉庫保管は短期コストは低いが、復旧時の人件・時間コストや読取不能リスクを抱えます。
- 予防が最も安い投資:定期的な媒体移行と複製(別メディア/クラウド)、チェックサム管理、アクセスログ・台帳の整備が長期的には有利です。耐久性の高いアーカイブメディア(例:M-Disc)も検討に値します。
実務向けの推奨対策(すぐできること)
- 読み出せたメディアは即座にISO化して複製(ローカルとネットワーク保存の二重化)。Disk Utility/
hdiutil
等でイメージ化してください。 - チェックサム(MD5/SHA256)を作成して保存履歴を残す:データ移行や破損検出に有効です。
- バックアップポリシーの見直し:データを「即時アクセス/中長期アーカイブ」に分類し、前者はクラウドやNASで冗長化、後者は信頼性の高い光学やオフサイト複製を検討します。
- 年次(または隔年)でメディア読み出しテストを実施:読み出し可能性の継続チェックを行い、問題のあるメディアは早期に移行します。
- メディア情報の台帳化:作成日・世代・中身概要・チェックサム・保管場所・読み出し履歴を管理してください。
最後に(まとめ)
今回のケースは「コストを抑えて古いメディアを保管する」ことが短期的には合理的でも、復旧コストや読取不能リスクが後で大きく跳ね返ってくる典型例でした。青葉印刷としては、データの重要度に応じた階層化(即時アクセス/中長期保管)と、早めのデジタル化(ISO化+チェックサム)を標準運用に組み込むことを推奨します。


